排水溝から這い上がってきたボルジュアは異臭を放っていた。少しでも近づけば、思わず吐いてしまいそうなほどの臭さだ。ブチャラティは鼻呼吸を止め、ボルジュアから距離をとる。脇に抱えているフーゴは犬の姿のせいか、肉球で鼻の穴を押さえている。
ボルジュアはそのまま攻撃を仕掛けてくると思ったが、自身のスタンドを取り出して大きな犬の姿になった。ぶるぶるっと頭から尻の先までを振るわせ、自身の体にまとわりついている臭いの因である汚物や煙草の吸殻などを振り払った。
そして再び、人間の姿に戻る。
「犬っころになった貴様、フーゴとかいったか」
ボルジュアの視線が、ブチャラティの脇に抱えられているフーゴに向けられる。
「貴様のスタンド能力から繰り出されるウイルスはとても興味深い。さっきはわたしの指先をちょいと掠っただけで、あれだけの効果が見られた。即効性のある毒薬は好ましい。ぜひもう一度効果を試してみたい。できることならば今すぐに」
パープル・ヘイズの手の甲に着けられているカプセルを見つめるボルジュアに、思わずぞっとする。自身のスタンド能力を恐れ、仲間からも極力使用を控えるように呼びかけられているパープル・ヘイズに、ここまで興味を抱かれることになろうとは。やはりボルジュアは略歴の通り、マッドサイエンティストとして墓碑銘に名を刻むべき相手のようだ。こんな人間がこの先も世の中に生きていては、麻薬犯罪は一向に終わりが見えない。
「試すにはまず、実験体が必要だ。さて……」
誰かいい人材はいないだろうか。そう考えを巡らせるように、ボルジュアは辺りを見渡す。しばらく辺りを見渡したところで、ある一点を見つめて目の動きが止まった。
ブチャラティがボルジュアの視線の先を辿れば、そこには道端に倒れている少年の姿だった。
まさか――ブチャラティの背中に悪寒が走った。
「フーゴ、スタンドを引っ込めろ! やつはお前の能力を利用してあの子供をやる気だ!」
「戻るんだ、パープル・ヘイズッ」
ボルジュアの目的であるカプセルを引いてしまえば、相手がカプセルを利用することはない。
フーゴはパープル・ヘイズを引いた。どうやら動物の姿になったままでも、ボルジュアと同じようにこちら側もスタンドは発現できるようだ。
しかし、ボルジュアはこちらの動きを読んでいたのだろうか。慌てる素振りは見せず、ブチャラティのほうへ駆け出しながらスタンドの注射器を打ち込む。スタンドの手を借り、本体の腕に注射器を打ち込んだ一瞬、敵の両手は塞がれて隙ができる。その隙を狙い、ブチャラティはスティッキィ・フィンガーズでボルジュアを叩いた。
しかしボルジュアは既に変化を終え、その場に舞った砂煙を大きな翼で飛ばした。煙の奥から姿を見せたのは大きな鷹だ。片手を失っても尚、その大きな翼で浮上できるパワーは鷹本来のものなのだろう。
「今度は猛禽類か」ブチャラティが呟く。
「貴様のそのスタンド、やはりかなり素早いな。まともに食らってしまえば命取りになる」
ブチャラティは鼻で笑った。
「なにが可笑しい。褒めているんだぞ」
「いいや、可笑しいことなにもない。オレはガキの頃、鳥と話をすることに夢見ていたのさ」
ボルジュアは翼を動きながら黙り込んだ。
「グラッツェ。またひとつ、夢が叶った」
「貴様はこの状況でわたしを馬鹿にするつもりか?」
ブチャラティの発言が癇に障ったのか、ボルジュアの声には怒りの色が含まれていた。
「ブチャラティ、下ろしてください」
「フーゴ?」
脇に抱えていたフーゴが地面に着地する。
「僕を抱えていては、あんたの腕が塞がれちまう。僕なら大丈夫だ。犬の姿にも慣れてきた」
それに、とフーゴは自身の毛並みを見やる。
「これを見てください。微かではありますが、僕の身体は徐々に戻りつつある。恐らく動物に変化できる時間は長くて一分なんだろう。持続性に長けているのであれば、ボルジュアが何度も人間に変化する必要はありませんからね」
「さっきの時間切れは、そういう意味か」
ブチャラティがフーゴと上空を飛んでいるボルジュアに目を向けていると、鷹の姿をしたボルジュアがまるでジェット機のように降下してきた。ボルジュアは地面に残っている雨の水滴を目眩ましのように吹き飛ばし、鋭い爪でフーゴの身体を掴み上げた。人間の姿に戻りつつあるフーゴであっても、子犬同然の身体では抵抗ができない。川で泳いでいるときに獲物となってしまった魚のような気分を味わいながら、視界はどんどんと広く、高くなっていく。
「無理やりにでもスタンドを出させてやる」
空高く飛び上がったボルジュアは、勢いを利用して再び地面に向かって降下を始めた。
ボルジュアはフーゴを地面に向かって突き落とそうとしている。数メートルの高さから落下しても幸い死には至らないが、加速が加われば話は大きく変わってくる。
「パープル・ヘイズ!」
身の危険を察知すれば、身体は無条件にスタンドを発動させようとする。自分の体が地面に叩きつけるまでの間、フーゴはパープル・ヘイズを繰り出した。降下していく自分とボルジュアに纏っている風は、下から上へ向かって吹いている。
フーゴはボルジュアの前に自らの手のひらを突き出し、殺人ウイルスの入ったカプセルを破壊させる。カプセルは割れ、紫色の煙が風の勢いで敵に向かって舞っていく。
ブチャラティはフーゴが突き落とされる位置を定め、スティッキィ・フィンガーズで複数のジッパーを網目状に作り出す。フーゴはブチャラティが自分の身体を受け止めてくれることを予想し、受け身をとりながらクッションとなったジッパーの上に着地する。
フーゴの推測通り、フーゴの身体は時間経過によって元の姿に戻っていた。
「咄嗟だったが、どうだ?」
「カプセルを投げたのか」
「僕のスタンドはそれしかできませんからね」
フーゴは空を見上げる。ボルシュアが鷹の姿に変化してから間もなく二十秒が経つ。殺人ウイルスを浴びれば、そろそろ空から叫び声が降ってきてもおかしくはない。
しかし、天は敵に味方をしているのか。雨雲の隙間から微かに太陽の光が差し込んだ。その光は充満しているウイルスの煙に向かって伸びていたのだ。
パープル・ヘイズのウイルスは光に弱い。太陽の光を浴びれば一瞬で浄化されてしまう。
ブチャラティとフーゴの背後に、ぼとっと鈍い音を立てて何かが落ちてきた。スタンドを構えたまま振り返ると、やはりそこには鷹から人間の姿に変化しているボルジュアがいた。先ほど食い破った腕。その手は既に二の腕の付け根しか残っていなかった。
フーゴが仕掛けた攻撃が少しでも掠ったのだろう。それでも身体中に感染する前に腕を切り落とす躊躇いのなさは、敵ながら生への執着心を感じさせる。
「やはり恐ろしいほどの破壊力だ。まさか、片腕をほとんど失う羽目になるとは」
「恐ろしいほどの判断力だ。まさか、片腕をほとんど失うことをするなんて」フーゴが返した。
「……それ、最近流行ってるのか?」
ボルジュアが油断している間、相手の背後からまだ残っている片腕をブチャラティがスティッキィ・フィンガーズの拳で叩く。ジッパーとなって吹き飛んだ片腕。両腕を塞がれるわけにはいかない、とボルジュアは宙を舞った自身の腕を、まるで投げられたフリスビーを加えるアジリティ競技の犬のように咥えた。
しかし、ボルジュアの片腕はスティッキィ・フィンガーズのジッパーによって繋がれている。ボルジュアが咥えた自身の腕はリードに繋がれた犬のように離れていき、ジッパーを辿ってブチャラティの元へ戻っていく。
「欲しいだろう」ブチャラティが腕を揺らす。
ボルジュアは大きな舌打ちを鳴らした。
「だったら自分でとって来な」
ブチャラティはボルジュアの腕からジッパーの繋ぎ目を外し、遠くへ放り投げた。
しかし、投げた方向がいけなかった。ボルジュアの腕が落ちた先には眠っている少年がいた。
間抜けともいえる行動に、ボルジュアも馬鹿にしたような笑いを上げる。すかさず移動速度の高い動物に変化し、自身の腕を拾い上げるために少年へ襲い掛かろうとする。
自分の失態は自分で取り返す。ブチャラティは地面にジッパーを引き伸ばし、少年へ襲い掛かろうとするボルジュアを左足で殴った。
当たった感覚はあった。しかし決定的なダメージを与えたという自信はない。
ブチャラティは少年の前に素早く回り、ボルジュアの攻撃から守るように辺りを警戒する。
「ブチャラティッ」フーゴが駆け寄ってくる。
「すまない、フーゴ。いまのはオレのミスだ」
「敵は、ボルジュアはいったいどこへ?」
見失ったボルジュアを捜していると、背後から微かに気配を感じた。小さな虫の音だ。振り返ったのも束の間、ブチャラティとフーゴはボルジュアのスタンドによって吹っ飛ばされた。受け身を取る余裕もなく、二人は壁に背中を打ちつけた。少しでも動かそうとすれば、折れた背骨が悲鳴を上げる。
ブチャラティの耳に、ふふっと不気味な笑い声が届く。声のしたほうを向けば、そこには既に事切れた少年を抱えているボルジュアがいた。時間経過で動物の姿でいられなくなり、自然と人間へ戻っていく。
ブチャラティがスティッキィ・フィンガーズで切断したボルジュアの腕は、先ほどの衝撃で路上に放置されたままだ。敵はもはや、自身の失った腕を諦めているのか。それとも自身の腕を取り戻す以上のものが目の前にあるからなのか、気味の悪い薄ら笑いを浮かべている。
ブチャラティが少年を助けようと足を一歩前へ進めたときだ。ボルジュアがスタンドを発動させ、複数ある注射器の中から一本を取り出す。それは今まで使用してきたものとは形状が違った。腕を失った本体に変わって、スタンドであるレイラ・セッションズがポンプ式の注射器を少年の腕に向ける。
「人間は完璧ではない。どんなに冷静な者でも絶対に失敗をするものだ」
ブチャラティは指先を、ぴくりと動かす。
「動くな。貴様ら二人が動いた瞬間、餓鬼の腕にこの注射器を突き立ててやる。しかも、これはわたしが今まで駆使してきた注射器じゃあない」
ボルジュアの目がフーゴに向けられる。そして慈しむような微笑を浮かべた。
「グラッツェ、フーゴ。きみがスタンドを発動させてくれたお陰で、微量だが採取できたよ」
ボルジュアのスタンドが握りしめている注射器の中は、微かに紫色に染まっている。あの紫色は目にしたことがある。パープル・ヘイズが撒き散らした殺人ウイルスだ。
「まさか、鳥になった状態で僕が撒き散らしたウイルスを注射器のなかに……」
「そうだ。きみがウイルスを飛ばしてくれたときにいただいたんだ。本当はもう少し欲しかったんだが、試す分には丁度いい量だ」
注射器の先端が、少年の腕に触れる。
「こうなった以上、のことはどうでもいい。いまはこのウイルスがどれほどのものなのか試したい。いったいどのくらいの時間で死に至るのか……。採取した成分を複製できれば、いい商売道具になるかもしれん」
先ほどまでボルジュアは、こそが自分の研究材料だと思っていた。しかし今は彼女以上にフーゴのパープル・ヘイズを気に入ってしまっているようだ。
相手にとって所詮、は商売道具の一部であり、自分が興味をそそる対象物でしかない。
「だけでなく、力のない少年を私利私欲のために利用するつもりか。お前、救いようのないゲス野郎だな。吐く気すら起きてこねえぜ」
「貴様はそれが間違っているとでも言うのか」
「なんだって?」
「貴様は自分の行っていることが正しいか、正しくないかの判断が出来るのかと訊いている」
ボルジュアは挑発している様子もなく、ただ冷静にブチャラティに問うているようだった。
「少なくとも、自分のためだけに周りを巻き込み、殺すようなことをする人間を正しいとは思えんな」
「なるほど。それは確かに正しい」ブチャラティの答えにボルジュアは合点する。
この切羽詰った状況でなにを言っているんだ。相手の心境を考えれば、今すぐにでも殺人ウイルスの入った注射器を少年に突き立ててもおかしくないはずだ。
「さっきからお前は何が言いたい」
「この世に等しい正しさはない。あるのは自分にとって都合が良いのか悪いのか。その二択だけが自分の中で正しさを決めることができる唯一の方法だ。他人に正しさを求めても無駄なだけだ。人の数だけ正しさがある。だからこそ人間は争い合うのだからな」
ボルジュアはスタンドと共に注射器を振りかざした。
「そして今、わたしにとって正しい行動とは、この餓鬼にウイルスを打ち込むことだ」
ブチャラティとフーゴは駆け出した。ボルジュアはそんな二人を嘲笑う。
「もう遅い。この餓鬼は二度も助からん!」
ボルジュアはスタンドに握らせている注射器を大きく振り上げた。注射器の先端は、少年の肌に深く食い込み、まるで爆弾のスイッチのように、注射器の押し子が強く押し込まれる。辺りに充満することなく、少年の腕に注入された殺人ウイルス。ボルジュアの腕から解放された少年はその場に力なく倒れ込んだ。
殺人ウイルスが注入された腕はみるみる膨れ上がり、感染していく。凄まじい速さで腐敗していく腕を見ながら、ブチャラティとフーゴは恐怖の表情を浮かべる。
一度でも感染が拡がれば、パープル・ヘイズのウイルスを除去することはできない。ボルジュアのように皮膚に触れるだけならまだしも、少年はウイルスを体内に直接注入されてしまった。ブチャラティたちが瞬きをしている間にも、少年の腕は腐敗していく。
「五秒だ。五秒で片腕が完全に腐敗していった。これからどう変化を遂げていく?」
興奮を露わにさせているボルジュア。相手にとって少年の腕が腐っていく様は、学生が初めて実験室で行われる化学実験を目の当たりにしている心境と変わりない。
ブチャラティとフーゴは押し黙った。パープル・ヘイズの破壊力は自分たちが一番よく知っている。免疫力のない人間を助けることは――もうできない。
待てよ、と誰かが呟いた。
その次に、おかしい、とまた誰かが呟く。
「……何かが、変だ」
しかしだ。数秒で全体に感染を進めていく殺人ウイルスは片腕のまま、他の場所にまで影響を及ぼしていない。その異変にいち早く気がついたのは、少年にウイルスの入った注射器を打ち込んだボルジュアだ。
「何故だ。何故、感染が拡がっていかない?」
「教えてやろうか」
「え?」
当惑するボルジュアがよそ見をする。こちらを向いた瞬間にブチャラティのスティッキィ・フィンガーズの拳がボルジュアの腹を貫いた。真正面からスティッキィ・フィンガーズの拳を浴びたボルジュアは血反吐を吐き、向かいの建物まで吹っ飛んでいく。
吹き飛ばされた瓦礫の中から、ふらふらとボルジュアが出てくる。スティッキィ・フィンガーズで殴りつけたボルジュアの腹は空洞になり、ジッパーが縫い付けられている。
ボルジュアはブチャラティの傍で眠っている少年を見て、その目を大きく見開いた。
「何故?」
ボルジュアは少年に指を差す。
「何故だ。何故、腕は完全に腐敗しているはずなのに、何故全身に感染が回らないッ?」
「説明してやるから喚くんじゃあねえ」
ブチャラティはスーツの腕部分についているジッパーを回し、ボルジュアに向かって素肌を見せた。それは筋肉質ではあるが、まるで少年のように華奢な腕をしている。
「これは彼の腕だ。何故少年に打ち込んだはずのウイルスが腕だけで止まっているのか。これが答えさ」
「まッ、まさか……」
「そうだ。オレのスタンドで少年の腕とオレの腕を予め代えていたのさ。そしてお前が少年に襲いかかった瞬間、お前の腕を吹き飛んだかのように見せかけた。いま路上に転がっている腕はお前の腕ではない。少年に預けていたオレ自身の腕だ」
「それなら、それならわたしの腕はどこだッ?」
「頭の悪い野郎だ。両腕のないお前の腕が、この状況でどこにあるか? 決まってるだろ」
ぼとり、と少年の片腕が腐り、その場に塵となった。ブチャラティは自分の身体に繋げていた少年の腕を外し、持ち主の元へ戻す。唖然としたまま立ち尽くしているボルジュアを無視し、ブチャラティも路上に転がったままの自身の腕を拾い上げて付け直した。
「お前は注射器を使うとき、決まって利き腕に打ち込むくせがある。そしてパープル・ヘイズのウイルスに目をつけたとき、それを試したいと思うに違いないと思った。その対象物はオレたちのようなスタンド能力を持っていない者に限定される。お前があの少年を狙うことは最初から分かりきっていたことだ。だからわざと、少年のほうへお前の腕を投げたんだ」
「わたしの腕と餓鬼の腕(ブチャラティの腕)を近づけさせ、入れ替えるためにか……」
「間違えて投げるわけねえだろ」ブチャラティは手首を回しながらボルジュアに歩み寄る。
両腕を失ったボルジュアは後ずさりする。しかし瓦礫に足が捉まり、後ろへ倒れ込んだ。ボルジュアの視点から見れば、後ろには逃げ場のない壁。目の前にはスタンドを背後に浮かばせながら攻撃態勢でいるブチャラティ――絶望的な状況だ。
「さあ。今度は何に変身して見せてくれるんだ。ん?」
ボルジュアは唇を噛んだ。
「できないんなら、オレがお前の姿を変えて見せようか」
ブチャラティは広げた手を拳に変えた。
「スティッキィ・フィンガーズ」
スティッキィ・フィンガーズの拳の連打がボルジュアのスタンドを打ちのめし、身体に巻かれている注射器を全て破壊していく。スタンドへの攻撃は本体への攻撃。スタンド能力の影響で体中がジッパーの継ぎはぎだらけになったボルジュアは、最早声をあげる余裕さえなかった。
最後の一撃が、ボルジュアの腹を貫く。
「お前の腹にパープル・ヘイズのカプセルを埋め込ませてもらった。オレがこの指をちょいと動かせば、カプセルに縫い付けたジッパーが解けるだろう」
ブチャラティはボルジュアの腹から腕を引き抜き、カプセルにジッパーを繋がせた。
「毒をもって毒を制すとはよく言ったものだ。フーゴに感謝するんだな。最期に自分の好きなもので死ねることができるこの上ない幸福を」
「……殺せ」ボルジュアが呟く。
「殺すのは全ての話を聞いてからだ。お前にはまだ、話してもらうべきことがあるからな」
死ぬのはそれからだ。そう呟くブチャラティの背後からは、新しい日の朝日が昇っていた。