三月十七日、土曜日。午前九時五十八分。場所はネアポリス駅。休日の駅構内はキャリーケースを引いている観光客や、切符を片手に刻印機へ向かう者で溢れている。タクシー乗り場では既に行列が続いており、足踏みをしている者の姿もちらほらと見える。
中央口駅構内の噴水前。ブチャラティは腕時計の時刻を確認していた。待ち合わせの時刻よりも少々早めに到着したが、辺りを見渡してもらしき姿は見当たらない。時間に几帳面な彼女であれば、すぐにやって来るだろう。ブチャラティはしばらくその場で待った。
十時のアナウンスが流れても、はその姿を見せていない。珍しいな、と考えていたとき、突然視界が真っ暗になった。驚き戸惑っていると、背後から笑い声が聞こえた。
「誰だと思う? ブチャラティ」
声の主は分かっていた。しかし、ブチャラティは敢えて分からないふりを続けることにした。
「オレにこんな事をできるやつは、いったい誰だろうな」
「さあ、誰でしょうね」
「それなら、オレからも問題を出そう」
「問題?」
「実は人を待っているんだ。待っている人物は、時間になかなか几帳面でな。待ち合わせや約束に滅多に遅れたりしないのさ。そんな彼女が今日はぎりぎりまで姿を現してくれなくて非常に心配している。悪いんだが、ここまで連れてきてくれないかい」
視界を塞いでいた両手がゆっくりと離れ、ブチャラティはようやく振り返った。そこにいたのは、やはりだった。
「やっぱりブチャラティのほうが一枚上手ね」は心なしか悔しそうに笑った。
「随分と可愛らしい挨拶だったな」
「一度やってみたかったの。遅くなってごめんなさい。服がなかなか決まらなくって……」
「気にするな。今の時季はなにを着たらいいか迷っちまうからな。きみは特にそうだ」
そう言うと、は盛大にため息を吐いた。その反応にブチャラティは思わず首を傾げる。
「どうかしたか」
はかぶりを振る。「あなたってほんとう、昔からそういうところが変わらない」
「どういう意味だ?」
「気にしないで。とりあえず鉄道に乗りましょう。あなたの切符ももう買ってあるから」
はハンドバッグから切符を二枚取り出した。その一枚をブチャラティに手渡し、刻印機で打つ。
鉄道の切符くらい自分で用意できる、と思ったが、黙っての厚意を受け取ることにした。
ホームに出ると、人の列ができていた。は適当なところで立ち止まり、列へ並ぶ。
「どこへ向かうんだ?」
「それは行ってからのお楽しみ。別に危ないところへ連れて行くわけじゃあないから安心して」
「危ないところでもオレは構わないんだぜ」
はおかしそうに笑った。「あなたの場合、行くところ全部がそういうところだからね」
列車が到着し、降りてくる乗客と入れ替わる。車内を少し歩いて空席を見つけたブチャラティは、の手を引いてそこへ座った。
「地下鉄はよく利用するけど、景色が見えるほうの鉄道は久しぶりなの」が窓の外を眺めながら言う。
「オレは最近利用したな」
「どこかへ行ったの?」
「ああ。フィレンツェのほうに」
ブチャラティはを見た。しかしは景色を眺めたまま、依然として表情は変えない。
さすがにこれだけでは材料不足か――。
「フィレンツェね。トスカーナ州は料理の他にもワインが美味しいって聞いたことがある」
「あとはブランド製品の本店も多いな」
「そうなの! この間、雑誌で見かけたんだけど、パリコレクションに参加していた大物モデルが着用していた洋服が展示されていたの。お客さんがたくさん来て、もう大変だったんだって。その服は今秋冬に向けてのプレゼンテーションの中でも一番人気で、販売はまだまだ先みたい。別のブランドでは、日本人の肌に合わせた化粧品も発売も予定していて、バリエーションもとっても豊富なの。もうどれも気になっちゃって」
突然饒舌になったに、ブチャラティは思わず小さく吹き出す。
「どうしたの?」
「いいや。随分興奮して話していたから、おかしくてな」
は、ぼっと顔を赤くさせた。「ごめんなさい。ついお喋りになっちゃった」
「構わないさ。それで? 話の続きは?」
笑いながら訊けば、は首を捻った。
「そう言われても……。こんな話をしても、ブチャラティは楽しくないでしょう?」
「そんなことはない。オレは、好きなことを嬉しそうに話しているきみを見たいんだからな」
ブチャラティの言葉に合点したのか、は「そういうことね」と頷いた。
「その気持ちなら、わたしも分かる気がする」
「と、いうと?」
「それは後でわかると思う」
変わりゆく景色を眺めながら鉄道に一時間ほど揺られ、終点に到着した。ブチャラティは行き先を聞かされていないため、先を歩くについていくことしか出来ない。
駅から出た道を歩いていると、が道路に停まっている車に向かって大きく手を振った。車はまるで挨拶をするかのようにワイパーを上下に動かし、運転席からサングラスをかけた白髪頭の男が出てきた。
「ブオンジョールノ、マリアーノ。久しぶり」
「ブオンジョールノ、。待っていたよ。今日は最高のドライブ日和だぜ」
二人は抱き合い、握手を交わした。
「紹介するね、ブチャラティ。彼はマリアーノ。仕事を通して親しくなった友人なの」
マリアーノと紹介された男は、サングラスを外してブチャラティへ握手を求める。
「ピアチェーレ、ブチャラティ。きみのことはからよく聞いているよ。いや、想像以上のいい男だ。男のオレも惚れちまいそうだぜ」
「グラッツェ。からどんな話を聞かされたのか気になるところではあるな」
マリアーノは車会社に勤務している妻子持ちの男なのだという。現在ではイタリア支部で支部長を任されており、国内はもちろんのこと、近年では国外への販売を率先して進めている、と話した。
にわかに信じがたい、というのが本音だった。しかしサングラスを取った顔は、ビジネス誌面でよく見かける顔立ちだ。今日はどこからどう見ても休日のリゾートを楽しむ父親にしか見えない。やはり身なりで人の印象は変わるものだ、と思った。
それにしても。そんな人物と面識があり、友人と紹介できるほどのに、ブチャラティは改めて驚かされる。一体どんな手を使って彼と交友を深めたのか。是非聞きたいところではあるが、今日は仕事の話は無しにしようと決めている。
「ねえ、マリアーノ。わたしが頼んでいた車は?」が停車している車を見ながら言う。
「すまない、。そのことなんだが、きみの車は少々遅れて到着することになったんだ」
「それはまた、どうして?」
「ヴェネツィアの国際空港がハッキングの被害に遭ったんだ。聞いていないかい?」
「ハッキング?」ブチャラティが訊いた。
「そのニュースなら知ってる。確か……」
はハンドバッグからスケジュール手帳を取り出し、次のことを読み上げた。
「ヴェネツィア・テッセラ国際空港は、一月二十三日、顧客情報管理システムへのハッキング及び、不正アクセスの被害を受けた。今回の件で、約百二十万件にも及ぶ顧客情報が漏えいした可能性があることを発表している。流出した情報は一定期間内に搭乗した者の個人情報を主に、過去に利用した空港の履歴を挙げている――今もまだ原因と経緯は特定できていないとは聞いていたけど、もしかして……」
マリアーノは頷いた。「わたしの部下が被害に遭ったんだ。でも心配はいらない。の個人情報を含め、頼まれた車は無事だよ。今回は間に合わなかったが、到着して洗車したらすぐにでも届けよう」
「それならよかった」
「。まさかとは思うが、この件にきみが絡んでいるなんてことはないだろうね」
マリアーノからへの問いかけに、ブチャラティは内心どきりとした。
「そんなわけないでしょう。ハッキングはわたしの専門外だし、規約に反するじゃない」
は本当に何も知らない、という顔で言った。その反応にマリアーノが苦笑する。
「相変わらず動じないなあ、きみは。ちょっとくらい鳴いてもいいんだぜ」
「もう、マリアーノったら。今日は時間が押してるの、早く車のキーをちょうだい」
マリアーノは謝りながらポケットから車のキーを出し、へ手渡した。
車の運転なら自分がしよう、とブチャラティが前へ出るが、によって制されてしまう。
「今日はわたしが運転席。あなたは助手席」
「きみが運転?」ブチャラティは思わず笑ってしまった。
「言っておくけど、ちゃあんと免許は持ってるからね。本当はわたしの車を見せてあげたかったんだけど、それはまた次の機会ってことで」
「そうは言っても、男のオレが呑気に」
助手席に乗るわけには行かない、という言葉もまた、によって遮られてしまった。
「いいからいいから。さあ、早く乗って」
半ば無理やり助手席に押し込まれ、丁寧にシートベルトまで巻かれる。ちょっとした監禁を受けている気分だ。助手席に座ることが珍しいわけではないが、が運転する車に乗るのは初めてのことだ。いや、寧ろ女性が運転する車に乗ること自体が今までなかった。
車の外ではがマリアーノと抱擁を交わしている。マリアーノはを抱き締めては、心底幸せそうな表情を浮かべている。ブチャラティと目が合うと親指を立てながら左目をつぶり、の背中を叩いた。羨ましいだろう、と言っているようだった。
運転席へが乗り込み、エンジンをかける。マリアーノへが手を振れば、彼は笑顔で振り返した。車道へ出ても、サイドミラーにはしばらくマリアーノの姿が映っている。どこまで手を振るつもりなのだろうか。思わず笑いをこぼすと、も笑っていた。
「楽しい人でしょう」
「ああいう上司なら、仕事も毎日楽しいだろうな」
「いつもああやって笑顔でいるの、彼は。会社ではイタリアの太陽って呼ばれているみたい」
「少し眩しすぎる太陽でもあるな」
「夏はきっと大変ね」
ハンドルを握っているに手つきは、非常に落ち着いていた。女の運転は男と比べて安全で丁寧と聞くが、まさにこのことだった。
の運転する車は、海沿いをひたすらに進む。天気の良い本日は、海の向こう側がよく見える。景色から隣へ視線を移すと、は横目でこちらを見てきた。
「暑い? 今日はちょっぴり気温が高いからね」
「いいや。隣で運転する女性を眺めることが滅多にないからな、つい見惚れちまってたんだ」
「もう、またそうやってからかうんだから」
「どうしてまた自分が運転する、なんて言い出したんだ」
はバックミラーを調節した。「今日はわたしが誘ったからね。色々と考えがあるの。それに一度でいいからブチャラティを乗せて運転してみたくって。昔はよくあなたが乗せてくれたじゃない?」
「それで? ご感想は」
は肩を縮めて笑った。「ちょっと緊張するかも」
緊張しているのは同じだ、とブチャラティは思った。
ずっと見つめられても気が散るだろうと、ブチャラティはグローブボックスを開けた。中には何冊かの雑誌と小説本、そしてCDアルバムが入っていた。ブチャラティは適当に一冊の雑誌を手に取って見る。表紙にはイタリアの観光名所の写真が何枚も載っていた。見出しには、『恋人と行くイタリアの絶景』と書かれており、思わず瞬きをしてしまった。残りの雑誌を手に取って見ても、やはり概要は変わらない。一番下に積まれた雑誌の表紙には、恋人同士がネアポリスの海辺を眺めながらワイングラスを鳴らしている写真が妙に目立っている。
「あッ。マリアーノったら、またそんなもの入れて」
雑誌を眺めていると、呆れた声でが言った。
「ごめんね。それはきっと、マリアーノが忍び込ませていた雑誌だと思う。よかったら暇つぶしにでも読んでいて。目的地まではあと一時間くらいかかるから」
「は彼に、オレのことをなんて紹介したんだ?」
は唸った。「友人、という風には言ったけれど、それじゃあ不服だったかな」
「友人という情報だけで、マリアーノはオレをいい男として認識してくれるのか」言いながら組んだ脚の上に雑誌を置き、ページを開く。
隣でのため息がこぼれた。ハンドルから離した片手で自らの顔を覆っている。だが、すぐに両手でハンドルを握り、差し掛かった緩やかなカーブでハンドルをきる。
「事実を言っただけ」
「事実?」
「あなたは優しくて、責任感がある。かといって自己中心的でもない。非の打ち所がないから」
「それは嬉しい限りだな。から見たオレはそんなに出来た人間なのか」
「昔から変わらない。ブチャラティはずっと」
昔、という言葉を聞いて、ブチャラティはと過ごした年月を一瞬だけ思い巡らせた。
「そうだ。なにか音楽でも流そうか。雑誌の脇にアルバムがあると思うから、適当に選んで」
雑誌を閉じ、アルバムを手に取る。ジャケットに印刷されている人物は、が昔から好んで聴いているアーティストばかりだ。最近このアーティストの楽曲を聴いたのは、と再会したあの車内だった。いまでも音楽の趣向がそのままなところをみて、ブチャラティはも変わらないな、と心の中で呟く。
円盤をオーディオにセットし、海沿いに似合う音楽が車内に流れる。運転するは、音楽のリズムに合わせて人差し指を叩いている。フーゴも同じような仕草をしていたが、自然と出てしまうのだろうか。
車内のアラームが小さく鳴った。デジタル式の時刻は丁度正午を記していた。
「もう二時間も経っていたのか」
「移動に時間がかかっちゃってるからね」
そういえば、と横目でのの視線を感じる。
「ブチャラティ、お腹空いてる?」
「そうだな。すこし減っているかもしれないな」
「じゃあ、わたしのバッグを取ってもらえない?」
ブチャラティは言われたとおりに後部席へ腕を伸ばし、のハンドバッグを取った。
「開けてみて。その……不恰好だけど、わたしが作ったお弁当が入ってるから」
「……弁当?」
を見ると、微かに頬が赤く染まっている。
「目的地に着くまでお店なんてないの。だからわたしが代わりに作ってきたんだけど……」
ブチャラティはもう一度ハンドバッグを見た。ファスナーを横へ引っ張り、最初に目が合ったのは花柄のランチクロスだ。頭部で蝶々結びされており、その間にはフォークとスプーンが挟まっている。取り出して膝の上に置き、バッグは後部席へ戻した。
固めの結び目を解く。手のひらよりも少し大きめのランチボックスが三段重なっていた。一番上の蓋を開けば、色とりどりの食材が綺麗に並んでいる。街中でよく見かける弁当とは異なり、見たことのない料理ばかりだ。ケチャップが添えられたソーセージの隣には、黄色の塊が渦巻きを描いている。
手作りの弁当なんて何年ぶりだろうか。両親が離婚する以前、母親が学校の遠足に持たせてくれたのが最後だ。
「本当にきみが作ったのか?」
は一笑する。「信じられないかもしれないけど、一から全部拵えたの。あ、ちょっと待ってね。お弁当を広げるなら、ここをこうして……」
が運転席と助手席の間の天井についている取っ手を掴んで下へ引くと、音を立てて折りたたみ式の小さなテーブルが出てきた。
「さっきマリアーノが教えてくれたの」
「至れり尽くせりだな」言いながらテーブルの上にランチボックスを置いた。
「たまにはいいじゃない。普段からこんな風にフーゴくんたちへ気配りしているんでしょう。きょう一日くらいはわたしに甘えてもいいんだからね」
「甘える、か」
そんなことを言われたのもいつ以来だろうか。この世界に入ってから、他人を頼ることはしてきたが、甘えるという行為とは無縁だった。
ブチャラティは二段目の蓋を開いた。箱の中身は三角形の形をした白い塊が四つ入っている。これは見たことがある。日本の白米だ。イタリア人は料理として予め味付けられたリゾットを好んで食すが、日本人は白米を毎日食べて生きていると聞いた。
三段目は切り揃われた果物と焼き菓子が入っていた。焼き菓子は果物の水分と触れ合わないよう、透明のシートで隔離されている。小さな気遣いがらしいと思った。
「それなら、お言葉に甘えよう。、この料理はどうやって食べたらいいんだ?」
は横目でブチャラティの指した料理を見た。
「それは手で掴んで食べるの。おにぎりっていう料理」
「手で掴んで食べられるっていうのに、名前は随分と言いにくいな」
ブチャラティは、その『おにぎり』にかぶりついた。
「どう? 味があまり薄いといけないと思って、中に焼いた魚を入れてみたんだけど……」
何度か噛みしめたあと、ブチャラティは満足げに頷く。「こいつは驚いた。ただの米の集合体がこんなに美味いとは思わなかった」
「よかった! 好きなだけ食べて。いっぱい作ってきたから」
「は腹が空いてないのか?」
「ちょっと空いてるけど、今は手が塞がってるから。少しだけ残してくれたらいいよ」
駅で会ってからこれまでのの言動を見るに、今日は本気で自分を甘やかすつもりで誘ったのだろう。鉄道の切符を受け取った際、購入した日付を見たが、今日から二日前のものだった。二日前といえば、ホテルでからデートの誘いを受けた日だ。あのあとすぐに用意したのだろうか。
もしかすると――普段よりも遅れて待ち合わせ場所にやってきたのも、こういった準備があったからなのかもしれない。そう考えると、目の前に広がっている弁当がとても貴重な宝石箱のように見えてくる。
ブチャラティは緩む口元を抑え切れなかった。こんなに嬉しいことはない。にやけない男がいるのであれば、今すぐここへ連れてきてほしいくらいだ。
珍しい料理をフォークで口へ運ぶ。味の薄さに最初は違和感を覚えたが、舌触りのよい優しい味がする。
「」
「なに?」
「とても美味しい。ディ・モールトグラッツェ」
「プレーゴ。ブチャラティにそう言ってもらえるように、朝から頑張って作った甲斐があった」
自分のために早起きをしてこれらを作ってきたの姿を想像しただけで、ようやく治まった口の緩みが再び崩れてしまいそうだ。ブチャラティは必死に隠した。
そんなときだ。車内にぐう、と腹の虫が鳴いた。犯人は一人しかいない。その人物は心底恥ずかしそうに唇を噛み、勝手に鳴り出した腹を擦った。
「手が塞がっているなら、オレが食べさせてやろうか」
真っ直ぐ進んでいる車が、ぐわんと横へ揺れた。
「そ、そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない」
「きみも腹が減っているんだろう。嫌なら近くの道で停めて、運転を代わってもらおうか」
それこそ嫌だ、と首を左右に振るったは、観念した様子で口を小さく開いた。焼き魚を運んでやると、はまるで魚のように口を動かした。その横顔があまりにも無防備で、ブチャラティは思わず吹き出してしまった。
は顔をむっとさせた。「もう、また笑われた」
「また?」
「前にフーゴくんとナランチャくんと三人でピッツァを食べているときに、ナランチャくんに笑われたの。は魚みたいに食べるな~~って」
初対面の女性相手にそんなことが言えるのはナランチャぐらいだろうな、と思った。
「怖い顔をするなよ。味はどうだ?」
「うん、ちゃんと美味しい」
「それならよかった。欲しいときは言ってくれたらいい。いつでも口へ運んでやるぜ」
「いいから、あなたは黙って食べるの」
抑揚のあるの声に、ブチャラティはまた笑った。